shelf


2019.12.03 written by Kikawa 音楽家ならだれでも知っておきたい「呼吸」のこと 豊かに響き合う歌声のために

バーバラ・コナブル著 小野ひとみ訳 「 音楽家ならだれでも知っておきたい「呼吸」のこと 豊かに響き合う歌声のために 」 誠信書房

 ボディ・マッピングという言葉があります。ボディ・マッピングとは「自らの身体の機能を知ること」と言い換えられるでしょうか。「歌うときは腹式呼吸で息を深く吸います」という説明は指導者なら誰もが行う説明ですが、それでは「身体がどのように反応していれば腹式呼吸と言える状態なのか」「そもそも深く息を吸うとは身体がどういう状態であるのか」という説明までセットで行われることはなかなかありません。この点において、この本が抽象的な理解を具体的な理解へと進める一つの助けになる可能性があります。
 解説はそれほど多いわけではありませんが非常にわかりやすいイラストが多く、初めて見る人はいくつもの発見があることでしょう。鼻孔とはどこにある空間のことなのか、舌はどのくらいの長さがあって、喉のどこまで繋がっているのか、顎関節はどこにあるのか、唇はどこにあるのか……。見えない身体の内側で起こっている「呼吸」という動きについてイメージを描くことで、本来の自分の力を妨げる身体の癖について気づくきっかけとなるやもしれません。自らのボディ・マッピングを正確に描くことで、もっと身体は楽に、そしてフレキシブルに動き始めるはず。呼吸に特化した薄い本なので、繰り返し読むのに適しています。毎回の練習前に読み返したい本です。

音楽家ならだれでも知っておきたい「呼吸」のこと 豊かに響き合う歌声のために