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2019.06.25 written by Kikawa 声楽家が下の親不知を抜くと歌に影響は出るのか その2

前回
声楽家が下の親不知を抜くと歌に影響は出るのか


下の親不知は、上と比べると抜くのが大変と言われています。
実際、抜くためにレントゲンを撮って説明を受けた際にお医者様は、「神経が近いからちょっと大変」と言っていました。
麻痺や痺れなどの後遺症が残る可能性も下の方が高いとのことで、やはり抜く前はかなり躊躇したのを覚えています。

さて、躊躇はしましたが、調べた際に下の親知らずが曲がって横向きに生えていることが判明したので、これはもう抜かざるを得ない状況になりました。
それはそんな回想。


2016年4月4日。
下の親知らずを抜歯する日。

そもそも20歳の頃、近所の歯医者で診察してもらった時に「親知らずは全部まっすぐ生えてるから抜く必要ありませんね!」と言われていたはずなのに。
28歳にして親知らずを抜くはめになるとはちっとも思わず。

上の2本は昨年(2015年)に抜いたが、比較的簡単に抜けた。
麻酔が効きづらい体質なのか、2回とも途中で麻酔をかけ直してもらったものの、抜くのにかかった時間は30秒くらい。
1日寝たらもう痛み止めも必要なく、歌うことも問題ないレベルだった。

問題は下。
再び近所の歯医者の発言に戻るけれど、その歯医者は「親知らずは全部まっすぐ生えてるから抜く必要ありませんね!」と言っていたのにも関わらず、今かかっている歯医者で調べてもらったところ、下の親知らずは思いっきり真横に生えていた。

真横に生えているなら早く抜くに越したことはないわけで。
だったら20歳のうちに抜いておきたかったよと思わずにはいられない。

下の親知らずは重要な神経に近く、その神経と歯が絡みついていて抜歯が難しかったり、まかり間違うと麻痺が残ってしまったりと、上の親知らずよりもかなり危険な代物のようだ。

それでもまっすぐ生えていれば抜くだけだが、私のように真横に生えている場合、歯茎を切開して、歯を砕いて取り出さなければならない。
なんと恐ろしい。

仰々しくタイトルには声楽家とつけたけれど、別に私は毎日本番が入る歌い手ではない。
でも、歌えないと指導も出来ず、結果商売にならないわけで、せめてある程度本番が入っていない時期でないと抜歯が出来ない。

なかなか上手くスケジュールの都合がつかず、上の抜歯は去年の7月と12月。
そして、とうとう下を抜く日が4月にやってきた。
ちなみにもともと3月だったものを延期しての今回である。

予定は1日空けて、準備は万端だ。

朝ごはんは玄米と味噌汁。
昼ごはんには山盛りのスパゲティジェノベーゼ。
これが最後の昼餐…と気合を入れて食べる。だって、たぶんこの食事を最後にしばらくまともに食べられないから。
ニンニク臭くなって焦る。

歯を磨いて、歯医者へ。

歯医者へ着くと、少しの待ち時間の後、いよいよ特別室へ連れて行かれる。

この歯医者、地元では有名な凄腕歯医者らしい。
確かに上の親知らずは鮮やかに抜いてくれた。
なので、今回もきっと大丈夫。と自分に言い聞かせる。

麻酔をかけられる。正直、これが一番痛い。
今回は上の歯を抜くよりも多くの麻酔を使っているようで、舌や唇もビリビリと痺れる。

麻酔が効いてきたところで、いよいよ施術開始。
とはいえ、口の中で何が行われているのかはよくわからない。
なにかやってて、歯がゴリゴリされている。くらいしかわからない。
麻酔の力はすごい。

途中で少し痛みを感じ始めたので、麻酔を追加してもらい、再びゴリゴリされる。
ゴリゴリされたり引っ張られたりの末、無事に抜歯完了。

およそ抜くのに30分かかった。
抜かれた歯は3つに砕かれていたけれど、いつどのタイミングで砕かれていたのかは全くわからなかった。
一昔前はハンマーを使って叩いて砕いていたそうだが、おそらく今は何かしらの機械で砕くのか。おそらくあの「ゴリゴリ」が砕いている時だったんだと思うのだが、つまりそれくらい何も感じなかった。

いやー、ひとまずよかったよかった。
と、安心してガーゼを噛みながらスマホをいじっていたのだが、事態はここから急転する。

血が止まりません。

右上の親知らずを抜いた時は15分ほどガーゼを噛んで、止まって終了。帰宅。
左上の親知らずを抜いた時は15分ほどガーゼを噛んで止まらず、その後もう10分くらい噛んで、止まったので帰宅。

今回は、20分噛んで止まらず、30分噛んで止まらず、30分噛んで止まらず。
大事なことだから2回言ったのではなくて、30分待った後にもう30分待ったのである。

縫合を一度外して、傷口に出血止めの薬を入れることに。
もう終わったと思ったのにまた縫われることになるとは…。
麻酔し直したりはしなかったが、まだ麻酔は効いていた。助かった。

その後30分ガーゼを噛んで、それでも止まらず。最後に40分噛んで、それでも結局止まらなかった。
とはいえ、ダラダラ流れるほどではなく、ちゃんとガーゼを噛んでいれば僅かに滲み出る程度のものである。

こういうことってあるんですか? と歯科衛生士のお姉さんに聞いたら、
これまでの人生で見たことがない苦笑いをされた。

最後のあたりはもう麻酔も切れてきて痛み出していたので、痛み止めを飲ませてもらうことに。
そして自分できちんとガーゼが噛めるかどうか練習し、大量のガーゼと共に帰宅。

施術が終わったのが15時過ぎだったのに、病院を出たのは18時過ぎだった。

帰宅途中ではもう完全に痛みが襲ってきていて、気分は悪いし、唾を飲むと首に激痛が走るし、辛い。
痛み始める前に痛み止めを飲めれば良かったのだが、ガーゼを噛んでいたからそれが出来ず。

帰宅後、ガーゼを取り替えるがやはり血は止まっていなかった。
病院では、「今日のところはゼリーとか、噛まなくていいものだけにしてくださいね」と言われていたのだが、水を飲むだけで激痛である。
当然、晩御飯を食べるどころではない。とにかく寝ることにする。

19時過ぎに寝て、23時に起床。
24時過ぎに再び痛み止めを飲まないと死んでしまうとの判断である。

寝ている間ももちろんガーゼは噛みっぱなし。
この時点でもまだ出血は止まっておらずガーゼは血だらけ。これ大丈夫なのか?
再びガーゼを噛んで就寝。

2016年4月5日。
8時半起床。
どうやら血は止まった様子だが痛い。
ので、起きて早速痛み止めを飲む。
おかゆと味噌汁を、ゾンビのような口さばきで食す。

9時半に歯医者へ行き、経過観察。
きちんと血が止まって、大丈夫そうとのこと。
早く治るようにと謎のレーザーを当てられ、消毒を受ける。

帰宅後、あまりにも空腹が辛いが、食べるのはやはり痛いのでじゃがいものポタージュを2杯飲む。
その後、再び痛み止めを飲んでも良い時間になったが、痛みがひどくならないようなので痛み止めは飲まなかった。
このまま痛みが治まっていくといいのだが。

20時。
少し痛みは残っているものの、痛み止めを使うほどではない。
歌の練習も多少ならできそう。
でも、大きな口は開けられないので、まだモノを食べるのは辛い。
晩御飯はおかゆと野菜炒めの小さい野菜、納豆にプリンとヨーグルト。
調子に乗ってチーズを口に入れたら、噛めなくて半泣きになった。

今の時点で、唾を飲み込んだりしても痛みはほとんどなくなった。
多少はあるが、耐えられないとか耐えられるとかのレベルではない。ほんのちょっと。

ただ、口の中に圧力をかけたりするとやはり痛いし、多少大きな口を開けても痛い。
少し頑張って話をしても痛い。
歌うのもやはり今は控えるべきだろうと思う。
右の頬はやや下膨れ状態で、触ると痛い。

万全な状態で歌えるようになるまで、果たして何日くらいかかるのだろうか。
続く。

声楽家が下の親不知を抜くと歌に影響は出るのか その3